政策研究ネットワーク山形(ブログ版)

組織の垣根や立場の違いを乗り越え、山形の人と知をつなぐ

第3回ミーティング開催のお知らせ「地方創生『まち・ひと・しごと創生』を地方の現場から考える(仮)」

26年度第3回ミーティングを「地方創生『まち・ひと・しごと創生』を地方の現場から考える(仮)」をテーマとして11月16日(日)に開催することになりました。ミーティングでは、県内で当該テーマをリードする活動をされている方を招いて講演を聴き、その後、ワールドカフェ形式で講師と会員、会員間で議論と交流を行います。

中央から見た地方創生

日本創成会議がこの5月に公表したいわゆる「消滅自治体リスト」が世間の大きな注目を集めました。これは、今後も地方から大都市への人口流入が今後も続くと仮定して独自の人口推計を行った結果、試算20~39歳の若年女性人口が2040年までに半数以下に減少する都市(「消滅可能性都市」)が(福島県を除き)896と約半数にのぼり、さらに、そのうち人口1万人を割る523自治体についてはより消滅の可能性が高いと結論づけたものです。

(ちなみに山形県では、東根市(-24.7%)、山辺町(-35.4%)、山形市(-38.7%)、米沢市(-46.7%)、寒河江市(-48.2%)、高畠町(-48.5%)、長井市(-49.8%)以外の28市町が「消滅可能性都市」とされています。)

その結果、地方の人口減少(および出生率の低い東京への一極集中)が今後の主要課題として認識され、7月25日に内閣府に「まち・ひと・しごと創生本部」設立準備室が発足されました。同時期に、経済財政諮問会議が「50年後に人口1億人台維持」との数値目標を打ち出しています。「まち・ひと・しごと創生本部」(地方創生本部)は内閣改造後に正式に発足し、ビジョン策定が始まりました。

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具体的には、有識者会議により、早ければ年内を目途に「2020年までの総合戦略」により、「骨太の方針2014」に示された「50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持する」との目標達成に向け、今後5年間にわたる具体的な施策イメージが示されることが決まっています。

臨時国会(「地方創生国会」)では地方創生関連法案の第一次案の提出がなされるとともに、来年度予算編成にあたっては概算要求で地方創生などの特別枠が設けられています。これは、来春の統一地方選を強く意識したものとみなされています。これら関連法案や来年度予算の特別枠が統一選対策の色合いを強めれば、本来の地方創生とは乖離し、「ばらまき」に帰着してしまうおそれもあります。

そこで注目されるのが、9月12日に地方創生本部初会合で決定された基本方針です。このなかでは、「地方中枢拠点都市及び近隣市町村、定住自立圏における地域連携を推進し、役割分担とネットワークを形成することを通じて、地方における活力ある経済圏を形成し、人を呼び込む地域拠点としての機能を高める」と明記されています。

この点については、総務省の「地方中枢拠点都市」構想が背景にあります。これは、3大都市圏以外で人口20万人以上、昼夜人口比率1以上の高度 な自治体機能を持つ拠点都市を選び、医療、介護、教育などの機能を集約する構想です。この拠点都市に対して、国は地方交付税の上乗せによる支援を行うことで、「選択と集中」を進めようとしています。また、国土交通省も「国土のグランドデザイン2050」を取りまとめ、人口減少対策として人口30万人規模の地方都市圏を維持する「高次地方都市連合」を打ち出しています。

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これらは、従来型の一律的なばらまきを排する可能性を持ったものとなっていますが、ただし、いずれの構想も、三大都市圏ないし七大都市圏だけが別枠に入れられて、あとは十把一絡げに語られています。地方任せでは限界があるという認識が今回の構想の背景にあることは確かでしょうが、これまでの成功事例が示すように、地方の多様な現実にアプローチするには、分権的アプローチが不可欠であり、いかに地方が利害対立を乗り越えた大局的視点によりまとまることができるのかが問われてもいるのではないでしょうか。

講師紹介

高橋信博氏

今回のミーティングでは、講師に山形県農政企画課・地域づくり専門員である高橋信博氏をお招きします。高橋氏は、農村計画課勤務が長く、「行政マンらしくない行政マン」として、県庁の1階から16階まで部課の枠を超えてワークショップ形式などによる課題解決方法や地域資源発掘などの実践面で依頼が舞い込み、対応してきた方で、県内は全市町村を回り各地域で住民と深く接し、東京大学に招かれ講義をし東大の学生を県内で実地トレーニングしたり、他県に招かれ講演などを行うなど、県内外千以上の地域づくりに関わり、全国区でご活躍されています。高橋氏に、地域づくりのあり方について本音を語っていただき、ボトムアップ型の地方創生の可能性について考えます。

第3回ミーティングのご案内

  • テーマ:地方創生「まち・ひと・しごと創生」を地方の現場から考える(仮)
  • 日時:2014年11月16日(日)13時30分より
  • 場所:文翔館第2会議室(正面入口から入り階段を上り、旧政庁の右隣の部屋)
    山形県山形市旅篭町3-4-51、TEL 023-635-5500
  • 駐車場:同館北の道路を挟んで反対側にあり
  • 講師:高橋信博氏(山形県農政企画課・地域づくり専門員)
  • 会費:無料(500円カンパを募ります)

ご関心のある方は是非ともご参会ください。非会員の方も会員登録(無料)いただければ参加することができます!

参考リンク

第2回ミーティングのご報告「福井地裁の大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方」

先日、当ブログでもお知らせしました第2回ミーティング「福井地裁の大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方」を9月6日に開催しました。堀川会員からはお茶菓子を提供いただき、小野会員がインターンシップの学生を連れてきて頂くなど、打ち解けた雰囲気で自由な議論が交わされました。

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わたしたちが社会を形成していくうえで、経済合理性や科学的客観知はもちろん不可欠なものです。しかし、それらがパターナリズムと結びつくと、無謬性(あるいはすべてはコントロール可能であるという神話)を帯び始め(批判する者は「反社会的」とのレッテルが貼られ封じ込められ、犠牲者は周縁に置かれ不可視化される)、市民社会を侵食する危険因子になってしまいます。講師の石川会員の指摘を受けとめれば、そうした意味で、原発は戦後日本における市民社会の未成熟さの象徴でした。

脱原発の路線は多くの国民が支持する一方で、「いつなくすのか」によって廃炉のもたらすリスクが変わってくるという現実も背景に、なし崩し的に再稼働が進められようとしていますが、当日の議論は、脱原発を政策化していくために一人ひとりができること、さらには、山形に最終処分場が建設される可能性なども話題に上がりました。

講師を務めた頂いた石川敬義会員のご厚意により、当日配付資料を政策研公式サイトにアップしています。一般公開していますので、ぜひごアクセスください。

政策研究ネットワーク山形|会員研究
http://www.seisaku-yamagata.net/papers.html

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第1回ミーティングのご報告「人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用」

先日、当ブログでもお知らせしました第1回ミーティング「人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用」を6月21日に開催しました。吉田会員から手作りのちまきを振る舞って頂くなど、ざくばらんな議論ができました。

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論点は実に多岐にわたりましたが、このブログでは、大きな論点のみピックアップして紹介したいと思います(会員の皆様には、石川事務局長による詳細な取りまとめをお送りしています)。

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主な論点

  • 人口減少社会における持続可能な地域発展を実現するには、65歳以上の高齢者を生産年齢人口に組み込み、新たなビジネスモデルを立ち上げることが鍵となる。
  • ところが、多くの県民(行政含む)は、60~65歳(定年)以降の就労に対する意識が極めて乏しく、そうした動きはほとんど見られない。
  • その背景には、本人の技能、地域性、年金等の社会保障制度、就労環境、家族関係など、さまざまなファクターがあり、単一の政策スキームを提示すれば解決する問題ではない。それぞれの状況に応じた自発的な就労とビジネスが立ち上がっていかなければならない。
  • そこで一人ひとりの県民(行政含む)の意識改革が重要になる。この意識改革を促すために、特定の地域に政策研が関与し、モデルケースを形成し県民に訴えていくというかたちが良いのではないか。
  • まず、その見込みのある戸沢村に入って、高齢者と会い、現状を認識し、当会が考えているようなことが当てはまるかどうか考えることから始めたい。

以上です。実際に戸沢村に入る日程は、メーリングリストでお知らせする予定になっています。今回のミーティングに参加できなかった方でご関心のある方は、是非ともご参加ください。

【開催日変更】第2回ミーティング開催のお知らせ「福井地裁の大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方」

26年度第2回ミーティングを「福井地裁大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方」をテーマとして開催することになりました。ミーティングでは、県内で当該テーマをリードする活動をされている方を招いて講演を聴き、その後、ワールドカフェ形式で講師と会員、会員間で議論と交流を行います。

画期的な判決

関西電力大飯原発

大飯原発運転差し止め訴訟は、関西電力大飯原発3・4号機(福井県おおい町)の再稼働は危険だとして、同県をはじめとする22都道府県の住民計189人が運転差し止めを求めた訴訟です。2014年5月21日、福井地裁は、「冷却や放射性物質の閉じ込めに欠陥がある」「運転により人格権が侵害される危険がある」などと指摘し、再稼働を認めない判決を出しました。2011年の福島第一原発の事故後、原発の運転差し止めを命じる判決は初めてのことです。

判決では、原子力発電所について「電気の生産という社会的には重要な機能を営むもの」とその必要性を認める一方、「原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである」とするなど、原告側および脱原発派からは画期的な判決として受けとめられました。

これに対して、関西電力は判決を不服として名古屋高裁金沢支部にすでに控訴しています。関電は、現在進む原子力規制委員会の安全審査に適合し、地元同意などの条件が整えば、控訴審判決の前でも再稼働を進める考えを示しています。

再稼働派がとりわけ問題にしているのは、「少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である」という判断です。これは「ゼロリスク」でなければ認めないと言っているに等しく、「安全のための工学」を全面的に否定しているとして批判しています。

新聞社説も評価二分

この判決については、新聞各紙でも評価が真っ二つに分かれており、読売、日経、産経の3紙が、百パーセントの安全を求めるのは「非現実的」などと厳しく批判したのに対し、朝日、毎日、東京の3紙が、国民の命を守る判決だと称賛しています。

山形では、吉村美栄子県知事が滋賀県の嘉田知事とともに「卒原発」を共同宣言するなど、原発依存からの脱却と代替エネルギーへの転換を進めようとしています。そこで、政策研第2回ミーティングでは、元山形新聞論説委員・前荘銀総研理事長である石川敬義会員に大飯原発再稼働訴訟判決と批判を読み解いていただき、その後、会員間で議論をおこない、今後のエネルギー政策についての理解を深めたいと思います。

第2回ミーティングのご案内

石川敬義会員
  • テーマ:福井地裁大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方
  • 日時:2014年8月24日(日)13時30分より
    日時:2014年9月6日(土)13時30分より
  • 場所:文翔館第2会議室(正面入口から入り階段を上り、旧政庁の右隣の部屋)
    山形県山形市旅篭町3-4-51、TEL 023-635-5500
  • 駐車場:同館北の道路を挟んで反対側にあり
  • 講師:石川敬義・元山形新聞論説委員・前荘銀総研理事長(本会会員)
    (※講師謝金は発生しません。)
  • 会費:無料(お茶菓子などのご提供は大歓迎!)

ご関心のある方は是非ともご参会ください。非会員の方も会員登録(無料)いただければ参加することができます!

参考リンク

第1回ミーティング開催のお知らせ 「人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用」

政策研究ネットワーク山形では、山形における地域生活の切実かつ具体的な課題をテーマとした「ミーティング」を2か月に1回程度開催し、人と知のネットワークを深化させています。

26年度第1回ミーティングを「人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用」をテーマとして開催することになりました。ミーティングでは、県内で当該テーマをリードする活動をされている方を招いて講演を聴き、その後、ワールドカフェ形式で講師と会員、会員間で議論と交流を行います。

人口減少や少子高齢化については問題提起がさまざまになされてきたものの実効的な解決策に取り組む動きはほとんど見られません。人口減少の進む地域社会では、定年者や高齢者の労働環境を創出、改善することが、若者に対しても豊かで明るい将来像を示すことにもつながり、持続可能な地域社会の構築に大きく貢献するものと考えられます。

しかし、高齢者の労働環境をめぐる問題はさまざまにあると考えられますが、その実態と対策についての調査研究は十分になされてきていません

そこで、政策研では、25年に村松真会員が「定年後の再雇用・再任用・継続雇用・自営業の状況に関するアンケート」と題した予備調査を実施し、26年度には 対象を拡大し、本調査を実施することになりました。さらに、本調査から得られた政策については、モデル企業を設けて実証事件をおこない、最終的な政策提言 冊子にまとめる計画になっています。

第1回ミーティングでは、村松真会員に少子高齢会における持続可能な地域発展を目指した高齢者雇用と上記調査設計について講演頂き、その後、ワールドカフェ形式で会員間で議論をおこない、本調査の設計を進めます。

第1回ミーティングのお知らせ

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  • テーマ:人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用
  • 日時:2014年6月21日(土)13時45分より
  • 場所山形大学東北創生研究所
    上山市金瓶字湯尻19-5、アクセスマップ
  • 講師:村松真・東北創生研究所准教授(本会会員)
    (※講師謝金は発生しません。)
  • 会費:無料(お茶菓子などのご提供は大歓迎!)

ご関心のある方は是非ともご参会ください。非会員の方も会員登録(無料)いただければ参加することができます!

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参考リンク

会員紹介(第1回)石川敬義事務局長(元山形新聞論説委員、前荘銀総合研究所理事長)

政策研究ネットワーク山形は、県内のさまざまな方々が自由に集まり、山形の人と知のネットワークの拡大と深化を目指しています。そこで、このブログでは、会の活動報告に加えて会員紹介も積極的に行っていきます。第1回は、本会の前身である「ローカルマニフェスト推進ネットワーク山形」設立当時から活躍されている石川敬義会員にお話を伺いました(2014年6月7日インタビュー)。

石川会員は、山形新聞社勤務時代に「本音が表に出ない」現実に直面し、新聞社を退職するとともに、本音で付き合う地域活動に傾倒し、独自の発言を活発に続けておられます。

◆石川敬義会員プロフィール
1942年、山形市生まれ、政策研究ネットワーク山形事務局長。元山形新聞社論説委員、前荘銀総合研究所理事長。現在、県「つや姫」戦略本部委員、県公共調達評議委員会委員、県ベストアグリ賞審査委員、荘内銀行ふるさと創造基金運営委員、山形市コミュニティファン評議員等を務める。この間、国の農村工学研究所(つくば市)非常勤監事、東北農政局評価委員会委員、日本観光学会会員、国際政治学会会員、計画行政学会会員、行政経営フォーラム会員、環境情報センター会員、県生涯学習センター「山形学」企画委員会委員長、県景観審議会委員、山形市行政評価委員会委員長、最上町行財政改革推進懇話会委員長、鶴岡総合研究所顧問、山形大学や東北文教大学の講師などを歴任。

少年時代、学生時代を振り返って

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石川敬義会員

大学は、早稲田大学の第一法学部に進んだのですが、当時は60年安保のさなかで、やはり学生運動に加わりました。ただ、全学連の思想に傾倒したというよりは、苦学生だったので学費値上げ反対の気持ちからですけど。大学の近くに下宿していて外で騒いでいる声が聞こえると、尻がむずむずしてしまう性格だったので、成り行きで運動のリーダーになってしまいました。結局、機動隊にやられてしまって、挫折を味わうことになりましたね。

山形新聞の記者として―山形県の農政と経済を追う

大学卒業後は東京に残る道もあったのですが、東京は人工のコンクリート・ジャングルで人の住むところではないと感じていました。自然に囲まれた山形の良さを再発見した訳ですね。それで、山形新聞社の就職面接を受けたところ、なぜか学生運動のことを聞かれなかった。それで運良く受かってしまったので、山形に戻ることになりました。

入社当初は社会部で警察回りを担当し、その後は農政や経済を担当するようになり、東京支社編集部長時代は首相官邸や国会や省庁回りで多忙でしたが、やはり東京暮らしは合いませんでした。本社と支社・支局(鶴岡、村山、長井、東京)をいったりきたりしました。報道部と違い勤務時間が決まっている整理部時代は年間100冊ぐらいのペースでさまざまな分野の本を読み、その時得た知識が後で役立つことになりました。

いろいろと記事を書きましたが、米国産チェリー輸入解禁直前にワシントン州まで行って米国のサクランボ事情を取材した記事は、雨水対策による栽培管理の普及に一役買うことになったり、生産調整に対する山形県農協独自のとも補償制度(計画転作を進める互助制度)でスクープ記事を書いたこともありました。

また、県と市町村に呼びかけ農業事情が似ているヨーロッパ諸国を参考にしようと実態調査行うため13のテーマを設け調査団を編成し数年にわたり英、独、仏、スイスなどに出かけ紙面で報告しました。山形は中山間地の急傾斜農地が多く生産性が高くないので、デカップリング(直接支払い)に取り組むことや、テレワークやグリーンツーリズムや住民活動としてのグラウンドワークトラスト運動の普及を訴えたりしました。そのときの欧州視察では、関心を持てない職員も加わったりして心外に感じたこともありましたけど…。

論説委員に就いてからは、社説やコラムを担当しましたが、そこで誰に指示されることなく自己に課した鉄則は「現場に行き当事者と直接会って議論してから書くこと」でした。現場を踏まず当事者の声を聞かずに記事を書いてはダメなんです。

その点、今のマスメディアは全般的に現場に行かず電話で取材を済ませてしまう傾向があると聞いています。それでは問題の真相や本質は見えてきません。だから、表面的、断片的、屈折した主張になり国民の信用が得られない。

そのほか、世界的潮流になったNPM(ニュー・パブリック・マネジメント)の全国組織に所属し定期的に東京での会合に参加し全国に多くの知己を得、県内の数多くの市町村で職員を対象に行財政改革政策評価や組織マネジメントなどについて講演しました。

本音が表に出ない世界

日本の政治は最近、原発問題やTPP問題や安全保障問題に見られるように、国民の声を聞かず暴走しがちになっていると思います。報道陣や論説陣は自分の考えを会社の方針に無意識に合わせていたり、政府の意向に反する報道をしないよう自己規制したりして、真実や本質から遠ざかっているのではないでしょうか。グローバル化や経済システムの高度化や民主主義の形骸化がそれに拍車をかけ国民が真相に迫ることを困難にしています。従って、同じ問題を扱ってもメディアによって主張内容が異なる場合があり国民の意識を問題の本質からそらし、世論をミスリードしている現実があります。

荘銀山形ビル
荘銀山形ビル

1998年に山形新聞社から引き抜かれる格好で荘内銀行の町田睿頭取(当時)、國井英夫企画部長(当時)の要請を受け、荘内銀行が設立した県内初の民間シンクタンクの荘銀総合研究所(現・フィデア総合研究所)の立ち上げに参画しました。荘銀総合研究所では、アルカディア街道復興計画、県産業調査、リレーションシップ・バンキング、再生可能エネルギーの可能性、限界集落化がもたらす影響の解明と地域管理手法の開発などの調査研究に携わりました。

「本音」で付き合う地域活動への傾倒

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今までの話は「表の顔」で、記者時代から共感できる現場の多くの人たちと出会うことができたため、彼らと一緒に仕事を離れて地域活動に取り組んできました。「理論」は「実践」を踏まえて初めて「空論」にならずに済み、「実践」を説得あるものにすることができると思うからです。この地域活動は本音でやれる「裏の顔」なんです。地域活動に取り組むきっかけとなったのは、1980年代に英国で始まり欧州中に広がっているグランドワーク・トラストの取材でした。

ナショナル・トラストは資金を集め貴重な自然環境や文化財を守る運動として世界的に有名ですが、グランドワーク・トラストは、住民と企業と行政の3者が協働して地域の自然環境や産業活動や教育環境の改善を目指すボランタリーな実践活動集団で、キーワードは「パートナーシップ」です。行政と企業と市民とが対等の立場で地域課題の解決に向かう、地域づくりの専門家集団が存在するのです。日本のNPO法人を自立力を備えた組織体にしたようなスキームで、荒廃した地域社会の再生、地域資源の利活用による地域活性化などで数多くの実績を残しています。さすが「民主主義の母国」だなと感じ入った次第です。

こうした活動の中に健全な民主主義と地域発展の可能性を感じ取るとともに、行政依存の強い「お任せ民主主義」の日本の社会システムとの落差を痛感しました。そこで、山形県の各地でグランドワーク活動を広めようと、取材で知り合った同志たちと活動を始めました。

山形五堰
山形五堰

なかでも大きな成果を上げているのが寒河江市で、佐藤誠六市長(当時)の理解があって、現在も佐藤順一さん(佐藤建設工業社長)が中心となって環境保全活動などに取り組んでいます。山形市内では、出羽公民館職員の斎藤政美氏(当時)を中心に住民と共に「つつみ」の環境整備で実績を上げています。最近では、山形五堰の保全活動にも取り組んできました。

荘銀総研の退職後は、「ローカルマニフェスト推進ネットワーク山形」(本会の前身)の活動に青年会議所と協力しながら取り組みました。仕事を辞めて、ようやく本音で物事に取り組めるようになりました。今は、頼まれてケーブルテレビ山形(吉村和文社長)のトーク番組「今日とは違う、世界がある。」のレギュラー・コメンテーターもやっています。

政策研究ネットワーク山形への期待

若い時から「既成の枠の内で生きること」の窮屈さを感じ、「新聞記者」や「研究員」の枠にも留まることなく、志を同じくする現場のさまざまな人たちとのネットワークを築き、地域活動を実践してきました。とはいえ、山形全体をみれば地域の人びとが自らの判断と責任で地域の諸課題に取り組む文化の土壌はまだまだ醸成されていないように思います。

でも、一人ひとりの心の中には、今のままで良くないと思っていることが必ずあるはずです。それが表に出てこないだけではないでしょうか。そうした思いを抱えている人たちをうまくつないでいくことが求められているはずです。特に、未来を担う若い世代の人々の奮起を期待したいです。政策研を、そうした人たちをつなぐネットワークにしていきたいですね。

(2014年6月7日、インタビューアー&構成・伊藤嘉高)

26年度ミーティング案を募集します!

26年度から隔月で山形の個別課題をテーマとしたミーティングを開催することが決まりました。 内容は、「活動方針」にありますように、山形における地域生活の切実かつ具体的な課題をテーマとして設定し、県内外で当該テーマをリードする活動をされている方を招いて講演を聴き、その後、ワールド・カフェ形式で講師と会員、会員間で議論と交流を行うというものです。

総会時に出席者のあいだでテーマを出し合い、第1回(6月下旬)テーマは「人口減少を背景とした具体的な高齢者就労支援」(仮)に決まりました。詳細は改めてご連絡致します。なお、下記のとおり、総会では数々の案が出されました。欠席者の方からもテーマ案を出して頂き、運営委員会やメーリングリストを活用して、第2回目以降の予定を立てたいと思います。 総会欠席者の方で「取り上げたいテーマ or 講師案がある」という方は、事務局までご連絡ください。

  • 雇用(Second Employment)について 定年後、中途退社後の就労先としてのNPOについて
  • 「具体的な高齢化社会の構築について」 講師は誰が良いとは言えないが具体的に取り組んでいる市町村・県・国の担当者はいかがでしょうか
  • 「地域産業の再生について」 今、具体的に展開しているところの責任者、担当者が良いと思います
  • 地方自治体の行政・議会への市民の関り方(活性化) 特に市議会への広い各層の市民の参画 高齢社会の活気ある地域づくり
  • ”人口減少社会”をテーマにするのがいいと思います。 講師としては、県のアドバイザーをしている(村山市出身)高崎経済大学の桜井常矢教授などが参考になると思います。 人口減少は全ての分野において共通した問題となっているので、そこから県内のいろんな問題みてはどうでしょう
  • 介護離職について 高齢化社会に伴い、親の介護の為に離職が問題になってきています。現状はどうかなどくわしく知って、何か出来ることを考えていきたい
  • 生涯現役社会→(就労、健康※医療費削限) 子育て就業両立支援
  • モンテディオ山形(サッカー)の経営について 社団法人から株式会社に移譲されたことの適法性?  芸工大と同じ構図(3年前)
  • ゴミ処理 ①飼料化 ②肥料化 ③再利用 ④再成化 集荷としくみ作り
  • “障害者差別解消法”に基づく、自治体(山形市)における条例化の具現化。 (法令の中で、タテ・ヨコを条例で広げる旨、記載があり、他自治体においても、勉強会《条例をつくる会》が立ち上がっている。その役割を、政策研究ネットワーク山形に担っていただきたい。) (最終的には、議員提案条例《賛同する議員をもって》条例としていく)
  • 男女共同参画 山形市(県)の男女共同参画推進状況の把握。その実情をふまえて、必要なこと、しなければならないこと、ネックになっていること等問題を洗いだす。 男女共同参画推進のために今できることは何か考える→できれば実施までできればよい。  講師案)山形大学 高木直先生、河野銀子先生
  • 反原発へ行動を起こす  ~日本の国土に人は存在できなくなる~
  • アベノミクスの欺𥈞性に気づけ  ~お金が紙くずになる日が近づいてる~
  • グローバル化の中の地域社会の在り方  ~成熟化へ行政システムの抜本改革~
  • 地元商店街の空洞化について  買物難民になりそうで心配です
  • 食糧・エネルギー・ケアの地域自給圏構想等

参照リンク