政策研究ネットワーク山形(ブログ版)

組織の垣根や立場の違いを乗り越え、山形の人と知をつなぐ

「山形市を中心とした山形県内自治体の人口ビジョンと総合戦略の検証」第3回勉強会(1月28日)のお知らせ

政策研究ネットワーク山形では、「山形市を中心とした山形県内自治体の人口ビジョンと総合戦略の検証」を今年度の研究テーマとして、現場レベルの声に耳を傾けながら、検証を行い、政治・行政関係者を中心に提言を行います。

第3回勉強会を1月28日(土)に開催することになりましたので、お知らせします。会場は、山形大学小白川キャンパスです。どなたでも参加可能ですので、ご関心のある方は、ぜひともご参加ください。

第3回勉強会のお知らせ+発表者募集

第3回勉強会を1月28日(土)13時30分から開催します。

第2回勉強会で挙がった下記のデータと論点に基づき、山形県・山形市の総合戦略(発展計画)と人口ビジョンを踏まえ、各会員から「山形市の強みを生かした、持続可能性のある人口ビジョンと総合戦略」について、それぞれに関心あるテーマのデータと実情、提言をお示ししただき、さらに議論を深めたいと思います。

議論の時間が限られていますので、ご自身の知見をご発表頂ける会員から、事前にペーパーをご提出頂き、それを事務局でテーマごとに整理し、各会員にも事前に目を通して頂いた上で、勉強会当日はテーマ別セッションを設け、自由なディスカッションを行いたいと思います。

そこで、ご発表頂ける会員は、タイトルを付したA4ペーパー(枚数は問いません)を1月21日までにメーリングリストにお流しいただくか、事務局までお送りください。一人でも多くの方のご発表をお待ちしています。

※ご出席頂ける方は、1月26日(木)までに、メーリングリストや電子メール等で事務局までご連絡ください(facebookアカウントをお持ちの方は、Facebookページでも参加申し込みを受け付けています)。 会員以外の方もご参加頂けます。よろしくお願い申し上げます。

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第2回勉強会のまとめ

第2回勉強会は、前回からさらに4名の方が新たにご参加くださり、3会員からの報告をもとに、それぞれの視点から活発な議論が交わされました。

seisakunet.hateblo.jp

第一報告「国における地方創生の現状」

第一報告(梅津庸成会員)では、まず、政府としての軸が、地方創生から一億総活躍社会に移行しており、個別の人口ビジョンに対する関心はほとんどないことが明らかにされました。その上で、今日の都市間競争の時代においては、山形市の客観的な「強み」を明示した上で、適切な人口ビジョンを設定すべきであるとの問題提起がなされました。

他方で、複数の会員からは、人口ビジョンはひとつの姿勢を示したものに過ぎず、具体的な数値にこだわるのではなく、その姿勢を大切にすべきであるとの指摘もなされました。また、過大な人口ビジョンでは、本来達成できるはずの筋道も見えなくなり、マイナスの影響を及ぼすとの指摘もなされました。

第二報告「山形における社会的移動の現実から人口30万人ビジョン実現の課題を考える」

第二報告(伊藤嘉高会員)では、山形市の社会的移動は、流入超が続いてきたが、徐々に減少し、2014年には流出超に転じ、2015年はさらに拡大している現状に対して、その背景についての分析がなされました。

たとえば、県外への転出の拡大、県外からの転入減が続いており、子育て世代を中心に転出超が拡大していました。とりわけ、子育て世代は、村山圏内での転出超は改善しているが、県外からの転入が大きく減り、全体で転出超に転じていました。また、20代は、宮城への転出超に変化は見られない一方で、関東への転出超が拡大していました。仙山連携は、対仙台の関係よりも、(山形+仙台の)対関東との関係を変えるものでなければ、効果は限られているとの示唆が得られました。

さらに、県内他市町村では、県外からの子育て世代は転入超にあることを踏まえると、土地利用規制緩和によって、宅地面積を増やせば、「ある程度」、山形市に転入させることは可能であるが、効果は限定的であり、持続性もないことが分かりました。その意味でも、山形の強みを生かした産業振興が伴わなければ人口増は困難であるとの指摘がなされました。

第三報告「農業と貧困から見る山形のこれから」

第三報告(草苅裕介会員)では、人口ボーナスによる経済成長の終焉とともに、日本国全体の人口減少、高齢化のなかで、従来型の産業振興が無効になっている指摘がなされました。その上で、山形が生き残るために、農業に焦点を当てて、1.ポーランドのバル・ムレチュニィをベースにした安価な食堂の設置、2.各農家等で作られる自家消費野菜や中央市場や丸勘等で食べれるが破棄される商品等を集荷し安価に移動販売する、3.農地を社会的共通資本とし公的組織が主体となった農業を行い職と食を生み出すことが提案されました。

いずれにせよ、成長を前提とした経済ではなく、持続可能な贈与経済を実現させ、ローカルな自立経済循環の仕組みをつくることが必要であり、「共有地の悲劇」を超えるためにコモンズ(入会)型の仕組みを作ることが必要との論点が打ち出されました。

論点のまとめ

以上の報告とともに各会員から指摘された主な論点を事務局でまとめたところ、以下の通りになりました。

  1. 山形市に宅地だけ増やしても人口(とりわけ子育て世代)が増える時代は終わった。
  2. 政府は、地方へ人口を還流させるマクロ政策をとりそうにない。
  3. 山形市のような地方の県庁所在都市も人口流出の時代に入っている。
  4. 宅地を増やして人口が増えるとしても村山地域の他市町村から奪う形になり、効果は限定的で、持続性もない。
  5. もちろん、人口減少の背景にある個々人の生活問題に取り組む政策を打ち出し、人口減少に対応する必要はある。
  6. そこで、他の地方都市に対する山形市の優位性を見いだし、それにしたがった産業振興とともに、実現可能な人口ビジョンを打ち出すことが求められる。
  7. ほぼ唯一の優位性は、仙台市政令指定都市)との隣接であり、仙山連携は理に適っているかもしれない(富谷町、広島の府中町などの例がある)。
  8. しかし、仙台との隣接が30万人を実現するほどのポテンシャル(とりわけ対関東に対する山形+仙台のポテンシャル)を有しているかは検討が必要。
  9. 優位性が見いだせなければ、他県から人口を呼び寄せるような産業振興は容易でなく、ローカルな自立経済循環の仕組みをつくることが必要である。
  10. たとえば、コモンズの仕組みの実現に向けて、従来の産業構造を転換することが求められる。そして、その転換を実現するためには、さまざまなかたちで、個々人のつながりを深める取り組みが必要である。