政策研究ネットワーク山形(ブログ版)

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「山形市を中心とした山形県内自治体の人口ビジョンと総合戦略の検証」第4回勉強会(3月25日)のお知らせ

政策研究ネットワーク山形では、「山形市を中心とした山形県自治体の人口ビジョンと総合戦略の検証」を今年度の研究テーマとして、現場レベルの声に耳を傾けながら、検証を行い、政治・行政関係者を中心に提言を行います。 第4回勉強会を3月25日(土)に開催することになりましたので、お知らせします。会場は、山形大学小白川キャンパスです。どなたでも参加可能ですので、ご関心のある方は、ぜひともご参加ください。

なお、多くの方にご参加いただいているため、さらに多くの方に多く発言頂き、有益な議論が行えるように工夫します。具体的には、ワールドカフェ方式を採用して、小グループに分かれて、席替えも行いながらディスカッションを行いたいと考えています。

第4回勉強会のお知らせ

山形市を中心とした山形県自治体の人口ビジョンと総合戦略の検証」第4回勉強会を3月25日(土)に開催します。

前回に引き続き、各会員から「これまでの議論を踏まえた上で、山形市の強みを生かした、持続可能性のある人口ビジョンと総合戦略」について、それぞれに関心あるテーマのデータと実情、提言をお示ししただき、最終的な提案をまとめていくことになりました。

これまでの議論を踏まえると、おそらく、最終的な提案では、個別の論点の詳細にまで立ち入ることはできず、人口ビジョンと総合戦略の問題点と課題を提示し、それに対応するいくつかの政策パッケージを示すことになり、次年度に、そのなかから具体的なテーマを設定し、詳細な調査と議論を行う形になるのではないかと考えております。

議論の時間が限られていますので、ご自身の知見をご発表頂ける会員から、事前にペーパーをご提出頂き、それを事務局でテーマごとに整理し、各会員にも事前に目を通して頂いた上で、勉強会当日はテーマ別セッションを設け、自由なディスカッションを行いたいと思います。

そこで、ご発表頂ける会員は、タイトルを付したA4ペーパー(枚数や様式は問いません)を3月22日(水)までにメーリングリストにお流しいただくか、事務局までお送りください。facebookユーザーの方は、下記ページでも受け付けています。一人でも多くの方のご発表とご参加をお待ちしています。

第1セッション「子育て・若者支援の政策課題を考える」

1. 山本泰弘 会員
 「幼児教育支援施策『まちなかクラス』」
2. 滝口克典 会員
 「若者支援をめぐる山形県の政策について」

第2セッション「山形市の『発展』の政策課題を考える」

1. 齋藤直希 会員
 「現実生活から感じる『山形市発展計画(抜粋)』の問題提起」(仮)
2. 伊藤嘉高 会員
 「市街化調整区域規制緩和の意義と課題」

 

第3回勉強会まとめ

第3回勉強会も、前回からさらに4名の方が新たにご参加くださり、4会員からの報告をもとに、それぞれの視点から活発な議論が交わされました。

seisakunet.hateblo.jp

第1テーブルでは、モビリティ(移動)に焦点をあてた報告がなされました。

まず、貞包英之会員からは、ご自身の調査に基づき、山形市生まれ&市外移住の経験のない者は、全市民の27.4%にすぎず、多くが移住経験を有していることが指摘されました。他方で、マクロな傾向として地域間移動の減少し、近距離間の移動の重要性が高まっていることが指摘されるなかで、県内他市町村から山形市に移住する動機が薄れており(近隣市町村に住んだ方が地価は安いし、不便でもない)、山形市単体で人口ビジョンを考えることの限界が指摘されました。

続いて、山本泰弘会員からは、移住の妨げとなるミクロなモビリティの問題を解決することも求められるとして、家と車をセットで貸し出す事業が提案されました。定住のためには自動車が不可欠だが、県民にとって、自動車を運転する生活は当たり前だが、移住希望者には、心理的、経済的負担が大きく、埋め合わせる施策が必要というわけです。

この事業構想に対しては、マクロな人口移動の動態そのものを変えるだけのインパクトのある施策が必要という意見とともに、ミクロな施策を積み上げることが重要との指摘もなされました。また、こうしたモビリティに関する施策は、とりわけ学生に対して有効なのではないかといった意見が出されました。

実際、多くの学生は車を所有しておらず、車のない不便な生活のイメージしかもてないために、卒業後、山形から離れてしまうという可能性が考えられます。したがって、家とセットとまではいかなくとも、学生がレンタカーを借りる際に、学校と行政、レンタカー会社が負担し合って、学生に低額で貸し出せるような仕組みを作ることで、学生に山形の魅力を感じてもらえるようになると考えられるからです。

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第2テーブルでは、さらに事業起こしにも焦点を当てた報告がなされました

まず、石川敬義会員からは、山形県労働生産性の低さが指摘される一方で、中小企業でも必ずしも労働生産性が低くなるわけではなく、地域資源を活かした独自産業こそ、労働生産性が高くなると指摘されました。つまり、従来産業の誘致や支援では、労働生産性に限界があり、魅力ある仕事を生み出せないため、独自産業を生み出すインキュベーションに対してこそ行政の支援を行うべきというわけです。

続いて、伊藤嘉高会員からは、まず、石川会員の問題提起を引き継ぎ、現下の地方創生では、いたずらな都市間競争を呼び、地方を疲弊させるばかりであり、持続的&自立的な経済圏の発想が求められることが指摘されました。とはいえ、そうした発想は、往々にして既存産業の温存につながり、新陳代謝が進まないという問題があります。

そこで、行政は、たとえば、中心市街地に対しては、新陳代謝の仕組みを作り出す「まちづくりNPO」等に対して補助金を出すようにスキームを改め、民間主導の市街地活性化を促すべきとの指摘がなされました。モビリティの高まりを考えれば、莫大な税金をつぎ込み、行政主導で中心市街地を再活性化させる必要性、必然性がないからです。

そもそも、モビリティの向上と、情報インフラの進展により、人びとの生活にかかわるすべての物事を一点に集中させる意味がなくなりつつあります。農業を解体し人びとを都市に集中させてきた論理そのものが反転しようとするなか、人間の生活空間を農業の空間に再配分させていく動きを育てていくべきとの意見もありました。

東京への人口集中の問題を、地方レベルでの人口集中によって解決できるわけがありません。東京を縮小再生産しただけの都市に何の魅力があるのでしょうか。そこで、中心と周辺(あるいは文化と自然)という従来型の空間の割り当てによる都市計画ではなく、田園型・分散型の「ゆとりとつながりのある」生活空間を実現する新たな土地利用規制&緩和を検討すべきとされました。

具体的には、スプロール化の愚を繰り返さないためにも、中心市街地以外でも、町内会等の地域団体をまとめる「まちづくりNPO」を地区単位で育成し、当該NPOに対して補助金を一括交付し、コミセンなどを核に、地区計画の策定や、地域経営、コミュニティビジネスを行う環境を整備すべきとの提案がなされました(さらに、当NPO職員から市職員に登用する仕組みも用意することで、地域をつなぐ能力を有し、熱意のある優秀な若者に地域で活躍してもらうとともに、そうした公務員を養成することにもつながるというわけです)。

さらに、地域包括ケアが機能していない現状を踏まえ、まちづくりNPOが小規模多機能型施設と連携して、地域包括ケアを実現させるという案も出ました。さらには、ケアマネの独立性が確保されていない日本では地域包括ケアは無理との指摘もなされました。(現下の法的枠組みのもとで)そうしたケアマネの問題に対応するためにも、事業者を超えた「地域ケア会議」(和光市などの先進的なケース)をまちづくりNPOと連携して開催するといった仕組みも考えられます。

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