政策研究ネットワーク山形(ブログ版)

組織の垣根や立場の違いを乗り越え、山形の人と知をつなぐ

「『市民のための市政』を梅津庸成氏と語る会」を開催します

政策研究ネットワーク山形の有志により、下記会合を開催します。

  • テーマ: 「市民のための市政」を梅津庸成氏と語る
  • 日 時: 8月26日 午後6:30〜7:30
  • 場 所: 「学び館」第2交流室(山形市本町1-5-19)

開催趣旨(石川敬義事務局長)

梅津庸成(山形市長選挙立候補予定者)

梅津庸成氏(山形市長選挙立候補予定者)は「市民のための市政」を掲げ、中央政府トップダウンではなく「自分たちのまちは自分たちで創る」というボトムアップの真の住民自治、市民本位、市民起点のまちづくりを訴えております。

住民自治は市民一人ひとりの意識と同時に自治組織の原点である町内会や振興会の自治意識が重要になります。ところが山形市の現状はとても理想的な状態とは言えません。

当政策研はかねてコミュニティや住民自治の在り方について調査研究してきました。そこで、問題意識を候補者と共有したいと思い懇談会開催を梅津氏に打診したところご出席を快諾して頂きましたので、特別例会を開催致します。

出席の方は、石川まで連絡願います。非会員で参加を希望される方は、ブログ右上のメーリングリストに登録してください(追って会員登録をしていただきます)。会場のスペースの都合で先着順に受け付けます。

次第

1. 発起人挨拶(石川事務局長)

2. 意見発表

(1) 真の住民自治とは(石川敬義会員)

(2) 町内会の現状と課題(小野仁会員)

(3) 仙台市山形市とを比べて(玉津菊子会員)

(4) 市民活動の視点から(齋藤和人会員)

3. 梅津氏と意見交換

※「学び館」(旧第一小学校跡、山形市本町1-5-19、℡623-2285)。駐車場は旧第1 小学校の西側の北から南へ向かう一方通行道路を挟み西側に無料で駐車可。駐車場の受け付けは無くなりました)

※例会は意見発表者を含め出席者全員から一人¥500の参加料を頂戴する規則になっております。よろしくご協力をお願いします。但し、ゲストはこの限りにあらず。

参考リンク

www.umetsuyosei.jp

twitter.com

会員紹介(第3回)茂木孝雄会員(天童市議会議員)

第3回会員紹介は、天童市議会議員の茂木孝雄会員です(2015年1月18日インタビュー)。あくまで市民の「代理者」として、天童市の議会、行政の問題点に立ち向かい、「おかしいことはおかしい」と言える社会の実現に向けて奮闘されています。

なお、本会はさまざまな立場や考え方をもった方々が集まって成り立っています。したがって、各会員のインタビュー記事は、必ずしも本会の見解を代表するものではありません。

茂木孝雄会員プロフィール
もてき・こうゆう。天童市議会議員(無所属、無会派)。1948年天童市生まれ。山形東高校、一橋大学経済学部を卒業後、東レAIU財務部長、東北パイオニア取締役経営戦略部長などを経て、2011年より現職。

東京での民間企業勤務を経て故郷、天童へ

茂木孝雄会員01(天童市議会議員)

1948年に天童市の現田鶴町で生まれました。天童駅南に位置する地区なのですが、あのあたりは織田信雄にはじまる天童織田藩の家臣たちが住んでいた町です。藩校が養生館という名前だったので、子孫たちで養生(ようせい)会という組織を持っており、わたしの家も家老職だったようで、父親がその会長を務めたこともありました。

両親ともに教師で、兄と妹も教師ですが、わたし自身は、教師の仕事以上にビジネスの世界や実態経済に興味があったのですね。東京の大学を卒業してから、東レを経て、AIGグループのAIUで人事企画や財務・資産運用の仕事をしていました。

ところが、1985年に、天童に住んでいた父親が倒れてしまって介護が必要になってしまいました。そこで、山形とは縁もゆかりもない妻が二人の子供と一緒に戻って介護をし、父親を看取ってくれました。たくましくやさしい妻でした。ただ子どもたちも思春期に差し掛かりましたので、都会でのビジネスマン生活を諦め、3年後に私も天童に戻ることができました。

というのも、当時、ヘッドハンティングの会社を経営していた大学の先輩が、トレーダー等のヘッドハント営業に来た際に、冗談交じりで「ぼくこそが、山形に戻る必要があるのだけど」という話をしたことがあったのですね。そうしたら、その先輩が山形の会社を探してくれて、それが東北パイオニアだったのです。東北パイオニアに勤務しながら、後半は取締役を務めました。会社の東証上場作業を担当して上場を成し遂げ200億円ほどを調達(残念ながら私が退職して数年後には上場廃止)したり、バレーボール部長を兼務してVリーグの昇格させたり、今は無くなりましたがオルゴール館を建設を手がけたりもしました。

ちなみに、私が帰郷して7年後に妻はがんで亡くなってしまったのですが、後妻に来てくれた前妻の妹が、今度は母親を看取ってくれました。私の議員活動も理解し、有能な秘書役として二人三脚の活動をしてくれています。妻となった二人にと義両親に対しては、感謝しても感謝しきれません。

地元の「志」ある仲間たちの「代理」で市議会議員に

天童に戻ってからは、会社に勤務しながらも、地元の仲間たちとの交流の中で、地域づくり=政治(?)に発言する機会も少なくありませんでした。同級生が『サンデータイムス』というミニコミ紙を出していたので、それに匿名で市政への異見や提言を書いたりしていましたね。

勤め人の生活を終えてからは、天童市の行政、議会、市議会議員のありように対する注文や不満を外野席で叫ぶだけではなかなか改善されないという思いも強まり、2011年9月の市議選の4か月程前に賛同する仲間と、天童世直しと銘打って「天の風」(後に「天童みらい・市民ネットワーク」に改称)という市民活動グループを立ち上げました。市民の目線・市民の感覚で、市民のために働く市議会に改革しようという市民団体です。「合併をしないまちづくり」を宣言し、大胆な行政改革や議員報酬の日当制などを推進してきた矢祭町の根本良一前町長の講演会なども開催したりしました。

そして、「市議会改革」を重点課題のひとつに掲げて、4か月ほど先に迫った市議選に向けて何人かの候補者を募ったのですが、なかなか候補者は現れず、私ともう一人が立候補することになりました。市議選と言うのは狭い世界での選挙ですから、人脈・血縁・商売・地元等のしがらみが強いものです。地元で特に自営業をしている場合は、それなりの覚悟が無いと難しいのかもしれません。特に天童市は保守色が強く、また損得抜きの市民レベルの活動が育ちにくい風土にありますので、「表には出られないけど、陰ながら応援します」というようなケースが多いように思います。私は、「天の風」の発起人の立場もあり、しがらみもなかったので、立候補を決断しました。

幸い、陰ながら応援してくれる方々もたくさんいたことで、実質3カ月弱の活動ではありましたが、1,000票近くをいただき、当選させていただき、議員活動を始めることになりました(もう1名は、落下傘候補ではありましたが善戦及ばず惜敗しました) 。

サンデータイムス紙面

自らの議会活動や意見は、天童市内全戸配布されるようになった『サンデータイムス』のスペースを、もちろん自費で購入して、毎月「市議会レポート」として報告しています。

二元代表制の一翼を担う役割を持ちながら、行政の監視・行政への提案の役割を充分に果たしていない市議会や行政の実態と問題点を市民の方々に共有してもらうことが大切であると考えているからです。お蔭さまでこの記事にも結構な反響があり、市内外、時には東京からもご意見や要望などを頂き、議員活動に取り入れさせていただいています。

あるべき市議会議員の姿とは

天童市に限らず、自治体の職員は、一般市民や地域の町内会長等(地域の問題を一番体感している方々です)が訴え、要望してもなかなか動こうとしません。一方で、市議会議員が働きかければ、全ての要望を聞くとは言いませんが、俊敏に反応するというきらいがあります。

そのため、市民自身が、「自分の地域にも議員が必要だ」と考えてしまい、議員定数を減らそうという話につながって行きません。本当に地域のことを理解しているのは町内会・自治会や地域住民なのだから、市の職員たちこそが、地域の声に耳を傾けるという姿勢をもっともつようになれば、議員のありかたも変わっていくはずです。市議会の改革と共に行政改革が必要なのですね。

それはともかく、地方議会議員のありかたとして、私が共鳴しているのが、つくば・市民ネットワークの取り組みです。市議会議員は生業ではないとして、2期を限度として、議員の職をネットワーク内のローテーションで回していくのです。そして、議員報酬の50%をネットワークに寄付して、そのお金はネットワークで行う調査研究の費用に充てられます。あくまで議員は市民の「代理者」の位置づけなのです。

実際、何期も議員を続けていては、ボス化したり、議席にしがみつくようになり、生業化し、選挙で当選することが最優先となり、改革の妨げにもなってしまいます。さまざまな職業で現役として能力を発揮している人や実績を挙げてきた人たちこそが集まってできる多様性あふれる議会からこそ、地方を変えていく力が生まれてくるのではないでしょうか。

山形でも庄内町長が以前、問題提起して話題になりましたが、わたしは、優秀なサラリーマンの方でも議会に参画できるよう、議会を夜間や休日などに開催するようにして、議員報酬も日当制(あるいは定額との併用制)にしていく必要があると考えています。議会の会議が平日の10時に開催(特別の場合以外は殆どが1~2時間で終わります)では、ビジネスマンや自営業者などの兼業議員は難しい。議員は非常勤職なので、本来兼業可能ですし、実体験した立場からも、充分に可能です。

天童市議会の問題点

天童市役所

天童市議会では、市議会改革委員会が設置され、10名の委員によって議論が重ねられ(無会派からは共産党1名のみだったので、私は委員に入れませんでしたが、「申し入れ」書を出すとともに、傍聴をつづけました)、議会報告と意見交換会の実施、議会基本条例の制定などが実現しました。その点では数歩前進しましたが、議員定数・議員報酬の削減については、「議員の役割・仕事とはどういうものか?」「議員の役割の対価として適正な報酬はいかほどか?」「議員が果たす役割を踏まえた議員の定数は何人か?」などの議論には踏み込まず、他市との比較や議員の生活保障といったレベルの論議から脱することができず、定数は据え置き、報酬は期末手当加算減額による年22万円削減にとどまっています。

本来、市議会は市長・執行部を監視し、政策提案をする義務があります。ところが、選挙の段階から市長支援を公言したり、市長執行部の与党的会派の議員がいます。与党会派が多数であり、結局は市長・執行部の敷いたレールに沿って市政が動いてきます。結果的には、市長・執行部の追認機関になってしまっています。

公開の場で、議員同士が議論し、議会として合意する。議会として、納得できるまで市長執行部に説明を求める。そしてその結果を市民に説明していくことこそが市議会の使命ですが、これまでの天童市では、天童市民病院の経営問題や、芳賀地区の開発内容・新駅設置など、議会としてもっと議論する重要課題はあったはずですが、議論が深められ、市民が納得する説明をすることが不十分でした。大きな怠慢と言えます。

その一例として芳賀地区の区画整理事業についてお話ししましょう。

芳賀地区区画整理事業(天童芳賀タウン広告)

芳賀新駅(無人駅、2015年3月「天童南駅」として開業)を全額(駅前広場整備を含め総額約9億円)天童市が負担して設置するという計画自体、その目的や費用対効果の是非が論議不十分でした。また、市が子育て支援施設を整備するために、区画整理事業地内に10,475㎡の土地を約4億7千万円で購入したことも大きな問題です(その他雨水排水調整池整備の突然の場所の変更と費用負担の問題もあります)。その政治的背景については触れないでおきましょう。

ただ、1㎡当り4万5千円なので、100円違うだけで、市にとっては100万円の損失になります。市民の大事な税金が無駄なく、適正に使われているのかの重要問題です。

これに対して、市議会の環境福祉常任委員会では、購入価格の評価基準があいまいで説明が納得できないと、2012年9月26日と10月4日の両日に議論され、賛成2、反対4で否決されました。ところが、10月11日の本会議では一転して賛成11、反対10の僅差で可決してしまいます。なかには、常任委員会で反対しながら本会議で賛成した議員もいました。

自治体等が公共用地を取得する場合の土地の評価算定は、一定の基準に基づき適正に算定することと「用地事務取扱要領」で規定されています。その適正な評価による取得を行うための基礎資料として、「不動産鑑定士による鑑定評価」を使うことにもなっています。

今回の用地取得に際しては、「保留地であるから鑑定評価になじまない」という不可解な理由で鑑定評価を行っていません。後からわかったことですが、区画整備組合の「言い値」で合意されてしまっていました。

ともあれ、問題の核心は、適正に用地取得の事務手続きが進められてきたのか否かです。したがって、今回のように議会で多数決で可決されたからと言って、用地価格の評価算定の適正さが担保されたとは言えないのです。

そこで、わたしは、交渉過程の具体的な内容や執行部側で行った土地の算定評価の内容の情報を公開するよう請求手続きを行いました。その結果、公開された関係資料を見る限りでは、適正な土地価格の評価調書も、備えておくべき適切な交渉記録もありませんでした。そして、1㎡当り45,000円という取得価格は、売り手である区画整理組合が要求した価格に過ぎなかったのです。しかも、区画整理組合の鑑定評価は2006と2007年に行われただいぶ前のものでした。

天童市初の住民監査請求、住民訴訟
―芳賀地区土地区画整理事業問題

有志議員が環境福祉常任委員会の開催請求を行い、市長執行部に対して説明責任を果たすことを求めてもらちが明かないので、わたし個人も市民の一人として情報公開請求に引き続き「住民監査請求」で、納得できる説明を要求していくことにしました。

市議会議員が監査請求をするのはいかがなものか」「議会に文句を言いたいなら議員を辞めてから言うべきだ」といった、わたしに言わせれば錯誤はなはだしい批判も起きました。市議会として放棄した役割は、市民の代理人である議員個人としてでもやるべきだと思います。

この活動を引き継いでくれたのが、県職員OBの同級生です。監査請求は監査委員に棄却されてしまいましたが、やはり私の大学の先輩でもある市民オンブズマン山形県会議の弁護士グループにも協力してもらい、2014年2月に山形地裁住民訴訟を起こしました。「過大な税金を使い、天童市民に損害を与えたので、天童市長は天童市に対して、少なくとも5,300万円を返還すべきだ」という論旨です。住民監査請求も住民訴訟天童市で初めてのことです。

現在のところ、この住民訴訟によって、平成22年2月に保留地の平均分譲価格は42,400円に引き下げられており、市はそれを知りながら、組合の主張通りの価格45,000円に同意したことが明らかになりました。そして、市は、「24年6月頃に組合が提示した価格の算定資料を検証した」と主張していますが、「誰が」「いつ」「どのように」検証し、市長がどう確認して最終決定したのかについて、文書も提示せず、「瑣末なものであり、釈明に値しない」と主張するばかりなのです。

結局のところ、こうした問題の多い土地購入問題を、市議会は納得できる説明を求めずに承認し、監査委員も住民監査請求に対して詳細な調査を示さずに却下したわけです。このことから分かるように、議会は執行部に対する監視機能を果たしていないと考えざるを得ません。

市議会への挑戦を求む!
―「おかしいことはおかしい」と言える社会へ

茂木孝雄・伊藤嘉高写真

地方議会の議員定数削減、議員報酬削減というと、表面的な歳出削減額のみがクローズアップされますが、目指すべきは、その先にある政治・行政機構の改革です。市議会を市議会自らで改革することはなかなか難しいことと感じています。市議会や議員自身に不利な事を、議会や議員が自ら決断することは不可能と、議会の中に入って実感しています。住民訴訟もそうですが、市民がしっかりと考え、発言し行動することが不可欠です。

そして、市民の目線で発言・行動する議員を増やすことも重要です。地方は「与党体制の議会」が多く、市民も「お上」が決めたことには逆らわないという意識も強いため、市民が「おかしいことはおかしい」と発言しにくい風土にあります。

市民が、自分の損得を基本に行動することをすべて否定はしませんが、100%損得で判断するのではさみしすぎます。「おかしいことはおかしい」と判断する割合を、少しでも高めてもらいたいと思っています。ひとりの市民の勇気が、多くの市民の意識と政治風土を変えて行くきっかけになれば素晴らしいことです。市議会への「参入障壁」は低くはありませんが、幅広い市民各層が挑戦できるよう、わたしの活動も続けていきます。

(2015年1月18日、ホテルメトロポリタン山形にて、聴き手・構成:伊藤嘉高)

会員紹介(第2回)小野仁会員(山形市議会議員)

第2回会員紹介は、本会の前身である「ローカルマニフェスト推進ネットワーク山形」設立当時から活躍されている山形市議会議員の小野仁会員です(2014年9月23日インタビュー)。さまざまなかたちで市民とネットワークでつながることにより、開かれた議会の実現、地域自治の活性化に尽力されておられます。

なお、本会はさまざまな立場や考え方をもった方々が集まって成り立っています。したがって、各会員のインタビュー記事は、必ずしも本会の見解を代表するものではありません。

◆小野仁会員プロフィール
おの・ひとし。1953年、山形市生まれ、ブリヂストンタイヤ山形販売勤務を経て、1990年に独立開業。各種地域団体・民間団体の役員、小中学校PTA会長等も歴任し、2003年より山形市議会議員。現在は、環境建設委員会委員長、山形市青少年問題協議会委員、山形市住居表示委員会委員、保護司、山形市青少年指導センター指導員、NPO法人山形県喫煙問題研究会常任理事、NPO法人障がい者情報支援ネットワーク・あいむネット理事、山形県防災士会副会長等も務める。

民間会社勤務から独立開業へ

小野仁会員02(山形市議会議員)

山形市香澄町の南追手前(現城南町)で生まれ育ちました。近所の人からは、この歳になっても、子どもの頃と同じように下の名前で呼んでくれるんですよ。山形中央高校を卒業してからは、東京で予備校生活を始めたのですが、親との約束で生活費をアルバイトで稼ぐようになってからは、いろいろな仕事に精を出す毎日になってしまいました。

そうした生活を送っていたところ、小学校の教師をしていた母親が狭心症で倒れてしまったのです。これ以上親に心配をかけさせるわけにもいかないということで、急遽、山形に戻り就職活動をしました。

営業に向いている人間だと思われたのか、運良く、ブリヂストンタイヤ山形販売に採用してもらいました。入社してからの仕事は順調で、営業成績もトップクラスで、昇進も早かったですね。そして、36歳の時に独立することになりました。当時は、各地で拠点形成によるエリア進出がはかられていて、その流れを受けて、会社からも30%の出資を得て山形市江俣に有限会社を立ち上げました。

社会貢献と政治行政への関心

独立した頃から、パートナードッグの飼育を個人的な趣味にしていて、麻薬探知犬、セラピードッグや補助犬を育てたりしていました。育てた補助犬福祉施設に預けられたことで、障害のある方たちと初めて接することになりました。自分たちが普段生活している社会とは「別の社会」を見たわけです。

「この人たちのために何かできることはないか」という意識が芽生え、福祉関係で新たな人間関係が生まれていきました。市議会議員になった2003年に日本パートナードッグ協会を立ち上げていますが、これは議員になる4~5年前から準備を重ねてきたものです。日本パートナードッグ協会は、数少ない介助犬の認定団体にもなりました。

福祉以外でも、さまざまな地域活動に参加していましたね。町内会や小中高のPTA等の役員活動といった活動はもちろんのこと、当時は自民党にいた鹿野道彦さんの勉強会にも参加したり、当時の山形大教授(現・東北文教大学教授)の大川健嗣教授の山形塾にも参加していました。人とのネットワークの多くはこの山形塾で築かれたものです。仕事も忙しかったのですが、やはり地域社会と関わるのが楽しかったんですね。

人生に転機が訪れたのが、仕事で独立してから10年後のことです。自分の店の敷地が県道拡幅の対象地になってしまったのです。このとき、立ち退きの補償をめぐって県と交渉することになったのですが、県の高飛車な態度にあきれ果てました。ただ、当時は流通革命のさなかで、元の販売会社からも教えてもらっていたことなのですが、メーカーがリテールも手がけるようになり、タイヤの販売業もだんだんと厳しくなるという時期でもありました。

また、同じ時期には、実家のあった地域も市による区画整理の対象になっていました。そこでは、高校時代の同級生もやはり大いに苦労していて、行政不信を募らせていました。それがきっかけで、同級生たちから「自分たちの同窓会からも政治家を出して、行政の風通しを良くしよう」という機運が盛り上がったのです。

わたしは同窓会の役員をしていて、ちょうど自分の仕事も転機を迎えていたこともあって、会長と副会長からも市議会議員への立候補を打診されました。物怖じしない性格を買ってくれたのでしょうか。私は政治家の秘書でもなければ、業界団体が付いているわけでもなく、同窓会からの応援という、いわば口約束だけだったのです。それでも、妻も何も言わず協力してくれて、立候補することになりました。

今考えると、よく立候補したなと冷や汗が出ますよ。さまざまな地域活動や福祉活動で培われた社会貢献に対する思いをかたちにしたいということが背景にあって、行政のやり方に対する義憤にかられて、立候補してしまったんですね。地区町内会長も応援してくれて、何とか当選することができました。2003年、49歳の時です。

中道の立場から社会的包摂を目指す

市議になった当時は無所属で、拉致問題などで自民党の沢渡和郎県議とも一緒に活動していました。福祉関係では、福祉に強い政党の議員が頑張っていましたが、それらの政党は党派性が強く、わたしはあくまで中道の立場から、何かに縛られることなく自由に是々非々の活動がしたかったのです。

ただ、翌年には、私が市議になる前から勉強会に参加させてもらっていた鹿野さんが民主党に復党したのをきっかけに、私も民主党に入党しました。社会的包摂という理念に大いに共感したからです。もちろん、理念だけではダメで、国政で民主党が批判を受けたように、具体的な政策展開がしっかりしていなければなりません。

私は、民主党に入党した年に、北川正恭三重県知事(早稲田大学大学院公共経営研究科教授)が始めた地方自治の勉強会に参加したことで、政策志向の地方政治家という像ができあがりました。これからの時代は、地方議員も勉強しなければならないとの思いを強くさせられたのです。

それがきっかけで、54歳になって、大川教授の勧めで東北文教大学に入り、卒業後は山形大学人文学部に編入学し、公共政策を学びました。そこで出会った北川忠明教授や石川敬義さんたちとで、北川前知事の提唱していたローカルマニフェストを推進するためのネットワーク組織(政策研究ネットワーク山形の前身)を立ち上げたわけです。

政治家の役割というのは、人びとが抱えている問題はさまざまありますが、そのなかでも政治行政で解決すべき普遍性をもったものを明らかにして、問題解決のために政策・制度面でできることを考え、その実現に向けて取り組むことにあります。

ところが、そうした活動の要をなすはずの選挙公約について、検証がなされることはありません。実際、市のマスタープランなどの政策に関心を持ちエネルギーを注ぐよりも、陳情に対応し、地域密着型で活動した方が選挙で票が集まるのです。

市の事業項目は1,800から2,000にも及ぶので、そのすべてのスペシャリストになることはできません。わたしは社会的包摂、インクルージョンの立場から、新自由主義路線とは一線を画して、福祉と教育で役割を果たしていきたいと考え、政策重視の議員活動に取り組んできました。私は経営者でもあるので、もちろん、市の財政にも目を向けています。

現在は、2013年からは山形大学の大学院にも進学し、障害者の参政権について研究を進めています。とくに視覚障害者の投票行動に現制度では十分に対応し切れていない点を明らかにするとともに、実際に、政治家として、選挙公報のあり方など、制度的に改正すべきことを提言し実行してきたいと考えています。

どうしても、福祉や教育に対する政策は、自分たちとは違う人に対して施しをすればそれで良いとしてしまう人がいるのですが、社会的包摂というのは、福祉の対象となる人も、自分たちと同じひとつの人生を過ごしているのだという目線で、社会参画を実現させていくことなのですね。

また、最近は、在宅医療・在宅介護について根本元先生たちの山形在宅ケア勉強会にも参加して、在宅での生活を多職種で支える地域包括ケアシステムの整備について政治的に支援できることを考えています。

地域自治の活性化に向けて

小野仁会員01(山形市議会議員)

ただし、私がやっているような活動は、特定の支持者の声を代弁するものではなく、誰が自分の活動を支援してくれているのか目に見えにくい。ネットワーク型で自由に人とつながっていくことが理想ですが、ホームページで政策発信しても、見てくれる人は議員の仲間や行政の職員に限られています。実際問題、政治家にとって「誰が投票してくれるのかわからない」状況はとても不安なのです。

最近では、政府の集団的自衛権行使容認に対する反対意見書の提出を求めたり、山形市公契約条例の制定に賛成したりしましたが、公契約条例の制定は否決されました。公契約条例によって、従来の入札制度によるダンピングを防止し、「総合評価一般競争入札」を導入することで、就職困難者の雇用を促進したり雇用の質を改善したりするとともに事業の社会的価値を高めるというものです。

こうしたテーマごとに党派性にかかわらず是々非々の立場で判断していると、支持者の方々から「見損なった」と言われることもあります。丁寧に説明していくしかありませんが、私の場合は、2期、3期目と少しずつ当選順位を上げているので、見えないところで支持してくださる方も増えているようです。

現在、山形市議会では市内8か所で地域報告会を開催していますが、昨年度は全会場で20数名しか集まりませんでした。天童や上山では1会場で20人位集まるので対照的です。地方自治の質の向上には、市民の方々に地方議会にもっと関心を持っていただくことが欠かせません。

私も山形大学インターンの学生を受け入れるなど試行錯誤をしていますが、いずれにせよ、向かうべき社会の方向性と、そのためにすべき具体的政策をしっかりと打ち出して、市民の方々に共有してもらえるよう、私たちがもっと頑張らなければなりません。

政策研究ネットワーク山形では、これからも党派や立場にとらわれることなくさまざまな立場の人が集まり、さまざまな課題について自由に討議を交わし、あるいは、さまざまな組織をつなぐことで、インクルーシブな社会の実現に向けたネットワークを広げていきたいですね。

(2014年9月23日、カナレットにて、聴き手&構成・伊藤嘉高)

参考リンク

27年度総会&研究発表「リスクが拡大、アベクロノミクス」のお知らせ

平成26年度の研究活動の成果発表とともに、総会を下記の要領にて開催します。総会では、27年度の活動方針も決定します。

非会員の方も、当日、ご入会頂くことで(年会費:無料)、参加頂くことができます。山形の人と知のネットワーク化に関心のある方は、ぜひご参加ください!

27年度総会&研究発表

  • 日 時:2015年6月13日(土)午後1時30分より
  • 場 所:文翔館第2会議室(正面入口から入り階段を上り、旧政庁の右隣の部屋)
    山形県山形市旅篭町3-4-51、TEL 023-635-5500
  • 駐車場:同館北の道路を挟んで反対側にあり
  • 会 費:無料

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総会議事

1. 会員活動報告

各会員より、この1年間の活動について、1分~3分以内でご報告いただきます。

2. 会員対策

26年度に実施した会員インタビューの報告(3件)と、27年度の実施予定、さらには、山形の人と知のネットワークの深化に向けて、会員外インタビューの実施について議論します。

3. 27年度のミーティング・テーマと講師選定

前回総会で出されたテーマ案(未実施分)とともに、27年度のミーティング・テーマと講師選定について議論します。

4. その他

政策研の活動について、各会員からのアイデアを求めます!

研究発表

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第3回ミーティング開催のお知らせ「地方創生『まち・ひと・しごと創生』を地方の現場から考える(仮)」

26年度第3回ミーティングを「地方創生『まち・ひと・しごと創生』を地方の現場から考える(仮)」をテーマとして11月16日(日)に開催することになりました。ミーティングでは、県内で当該テーマをリードする活動をされている方を招いて講演を聴き、その後、ワールドカフェ形式で講師と会員、会員間で議論と交流を行います。

中央から見た地方創生

日本創成会議がこの5月に公表したいわゆる「消滅自治体リスト」が世間の大きな注目を集めました。これは、今後も地方から大都市への人口流入が今後も続くと仮定して独自の人口推計を行った結果、試算20~39歳の若年女性人口が2040年までに半数以下に減少する都市(「消滅可能性都市」)が(福島県を除き)896と約半数にのぼり、さらに、そのうち人口1万人を割る523自治体についてはより消滅の可能性が高いと結論づけたものです。

(ちなみに山形県では、東根市(-24.7%)、山辺町(-35.4%)、山形市(-38.7%)、米沢市(-46.7%)、寒河江市(-48.2%)、高畠町(-48.5%)、長井市(-49.8%)以外の28市町が「消滅可能性都市」とされています。)

その結果、地方の人口減少(および出生率の低い東京への一極集中)が今後の主要課題として認識され、7月25日に内閣府に「まち・ひと・しごと創生本部」設立準備室が発足されました。同時期に、経済財政諮問会議が「50年後に人口1億人台維持」との数値目標を打ち出しています。「まち・ひと・しごと創生本部」(地方創生本部)は内閣改造後に正式に発足し、ビジョン策定が始まりました。

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具体的には、有識者会議により、早ければ年内を目途に「2020年までの総合戦略」により、「骨太の方針2014」に示された「50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持する」との目標達成に向け、今後5年間にわたる具体的な施策イメージが示されることが決まっています。

臨時国会(「地方創生国会」)では地方創生関連法案の第一次案の提出がなされるとともに、来年度予算編成にあたっては概算要求で地方創生などの特別枠が設けられています。これは、来春の統一地方選を強く意識したものとみなされています。これら関連法案や来年度予算の特別枠が統一選対策の色合いを強めれば、本来の地方創生とは乖離し、「ばらまき」に帰着してしまうおそれもあります。

そこで注目されるのが、9月12日に地方創生本部初会合で決定された基本方針です。このなかでは、「地方中枢拠点都市及び近隣市町村、定住自立圏における地域連携を推進し、役割分担とネットワークを形成することを通じて、地方における活力ある経済圏を形成し、人を呼び込む地域拠点としての機能を高める」と明記されています。

この点については、総務省の「地方中枢拠点都市」構想が背景にあります。これは、3大都市圏以外で人口20万人以上、昼夜人口比率1以上の高度 な自治体機能を持つ拠点都市を選び、医療、介護、教育などの機能を集約する構想です。この拠点都市に対して、国は地方交付税の上乗せによる支援を行うことで、「選択と集中」を進めようとしています。また、国土交通省も「国土のグランドデザイン2050」を取りまとめ、人口減少対策として人口30万人規模の地方都市圏を維持する「高次地方都市連合」を打ち出しています。

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これらは、従来型の一律的なばらまきを排する可能性を持ったものとなっていますが、ただし、いずれの構想も、三大都市圏ないし七大都市圏だけが別枠に入れられて、あとは十把一絡げに語られています。地方任せでは限界があるという認識が今回の構想の背景にあることは確かでしょうが、これまでの成功事例が示すように、地方の多様な現実にアプローチするには、分権的アプローチが不可欠であり、いかに地方が利害対立を乗り越えた大局的視点によりまとまることができるのかが問われてもいるのではないでしょうか。

講師紹介

高橋信博氏

今回のミーティングでは、講師に山形県農政企画課・地域づくり専門員である高橋信博氏をお招きします。高橋氏は、農村計画課勤務が長く、「行政マンらしくない行政マン」として、県庁の1階から16階まで部課の枠を超えてワークショップ形式などによる課題解決方法や地域資源発掘などの実践面で依頼が舞い込み、対応してきた方で、県内は全市町村を回り各地域で住民と深く接し、東京大学に招かれ講義をし東大の学生を県内で実地トレーニングしたり、他県に招かれ講演などを行うなど、県内外千以上の地域づくりに関わり、全国区でご活躍されています。高橋氏に、地域づくりのあり方について本音を語っていただき、ボトムアップ型の地方創生の可能性について考えます。

第3回ミーティングのご案内

  • テーマ:地方創生「まち・ひと・しごと創生」を地方の現場から考える(仮)
  • 日時:2014年11月16日(日)13時30分より
  • 場所:文翔館第2会議室(正面入口から入り階段を上り、旧政庁の右隣の部屋)
    山形県山形市旅篭町3-4-51、TEL 023-635-5500
  • 駐車場:同館北の道路を挟んで反対側にあり
  • 講師:高橋信博氏(山形県農政企画課・地域づくり専門員)
  • 会費:無料(500円カンパを募ります)

ご関心のある方は是非ともご参会ください。非会員の方も会員登録(無料)いただければ参加することができます!

参考リンク

第2回ミーティングのご報告「福井地裁の大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方」

先日、当ブログでもお知らせしました第2回ミーティング「福井地裁の大飯原発運転差止判決と原発廃炉の行方」を9月6日に開催しました。堀川会員からはお茶菓子を提供いただき、小野会員がインターンシップの学生を連れてきて頂くなど、打ち解けた雰囲気で自由な議論が交わされました。

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わたしたちが社会を形成していくうえで、経済合理性や科学的客観知はもちろん不可欠なものです。しかし、それらがパターナリズムと結びつくと、無謬性(あるいはすべてはコントロール可能であるという神話)を帯び始め(批判する者は「反社会的」とのレッテルが貼られ封じ込められ、犠牲者は周縁に置かれ不可視化される)、市民社会を侵食する危険因子になってしまいます。講師の石川会員の指摘を受けとめれば、そうした意味で、原発は戦後日本における市民社会の未成熟さの象徴でした。

脱原発の路線は多くの国民が支持する一方で、「いつなくすのか」によって廃炉のもたらすリスクが変わってくるという現実も背景に、なし崩し的に再稼働が進められようとしていますが、当日の議論は、脱原発を政策化していくために一人ひとりができること、さらには、山形に最終処分場が建設される可能性なども話題に上がりました。

講師を務めた頂いた石川敬義会員のご厚意により、当日配付資料を政策研公式サイトにアップしています。一般公開していますので、ぜひごアクセスください。

政策研究ネットワーク山形|会員研究
http://www.seisaku-yamagata.net/papers.html

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第1回ミーティングのご報告「人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用」

先日、当ブログでもお知らせしました第1回ミーティング「人口減少社会における持続可能な地域発展を実現する高齢者雇用」を6月21日に開催しました。吉田会員から手作りのちまきを振る舞って頂くなど、ざくばらんな議論ができました。

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論点は実に多岐にわたりましたが、このブログでは、大きな論点のみピックアップして紹介したいと思います(会員の皆様には、石川事務局長による詳細な取りまとめをお送りしています)。

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主な論点

  • 人口減少社会における持続可能な地域発展を実現するには、65歳以上の高齢者を生産年齢人口に組み込み、新たなビジネスモデルを立ち上げることが鍵となる。
  • ところが、多くの県民(行政含む)は、60~65歳(定年)以降の就労に対する意識が極めて乏しく、そうした動きはほとんど見られない。
  • その背景には、本人の技能、地域性、年金等の社会保障制度、就労環境、家族関係など、さまざまなファクターがあり、単一の政策スキームを提示すれば解決する問題ではない。それぞれの状況に応じた自発的な就労とビジネスが立ち上がっていかなければならない。
  • そこで一人ひとりの県民(行政含む)の意識改革が重要になる。この意識改革を促すために、特定の地域に政策研が関与し、モデルケースを形成し県民に訴えていくというかたちが良いのではないか。
  • まず、その見込みのある戸沢村に入って、高齢者と会い、現状を認識し、当会が考えているようなことが当てはまるかどうか考えることから始めたい。

以上です。実際に戸沢村に入る日程は、メーリングリストでお知らせする予定になっています。今回のミーティングに参加できなかった方でご関心のある方は、是非ともご参加ください。